はたしてMavic Proは個人ユーザーの購入すべき空撮ドローンの最適解になりうるか【考察レビュー】
2017/03/30
目次
DJI最新機「Mavic Pro」とは
DJIといえば、世界一有名なドローンと言っても過言ではない「Phantomシリーズ」を販売しているメーカーだ。このDJIが2016年3月にPhantom4を発売している。そしてその約半年後である2016年11月に満を辞して発売されたDJI最新鋭ドローンが「Mavic Pro」である。
2017年現在においても、Mavic Proは品薄状態にあり、入手困難な状況にあることからも、その人気は窺い知ることができる。この人気の理由は何か?その実力は本物なのだろうか?
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Mavic Proの基本スペックと特徴
「DJI史上最もコンパクトな最先端フライングカメラ」
DJIがMavic Proにつけた謳い文句は「DJI史上最もコンパクトな最先端フライングカメラ」だ。私はこれを「Phantom4を個人向けにブラッシュアップしたドローン」と解釈している。
飛行時間や飛行速度、カメラ性能など詳しくは後述するが、Phantom4と同価格帯・同水準の高性能ドローンであり、そこに「軽量化」と「折りたたみ機構」による携帯性の著しい向上が図られたのが「Mavic Pro」である。
携帯性を格段に高めた「折りたたみ機構」
Mavic Proの最大の特徴が「折りたたみ機構」である。4枚のプロペラを折り畳んで(取り外す必要はない)、さらにプロペラを支えるアーム部分を変形させることで、四角いブロックのような状態に変形させることができる。これは動画で確認するとよく分かるが、30秒もかからないシンプルなものだ。
通常、ドローンを飛行させようと出かける場合、ドローン本体に加えて、コントローラー(正確にはプロポと呼ぶ)、予備プロペラ、予備バッテリー、これらを入れる専用バッグが必要となる。ドローンをお持ちの方ならわかるだろうが、ドローンはプロペラが邪魔であり適当なトートバッグやリュックサックに放り込んで持ち運ぶのが難しい。この持ち運びの億劫さから、ドローンで遊ばなくなるという人は多い。
その点において、MavicProは変形機構により携帯性が格段に向上した上、重量も本体とバッテリーを合わせて1キロ以下にまで軽量化されており、持ち運び時の煩わしさが大きく解消されている。そのためMavic Proは、レジャーとしてのドローンのハードルを下げることに成功している。
豊富な自撮り(セルフィー)機能
セルフィーというのは、いわゆる自撮りである。昨今では、スマートフォンで誰でも手軽に自撮りができるようになり、思い出を残すために写真を取るという以外にも、TwitterやInstagramといったSNSに画像をアップロードしたり、Youtube等へ動画投稿が盛んに行われている。
自撮り画像・動画撮影にドローンを利用すると、通常とは全く異なるアングル・距離感からの魅力的な作品を生み出すことが可能となる。特に山登りやスキー・マリンスポーツなどの自然の中で楽しむレジャーで重宝するだろう。
またスポーツにおいて、自身のフォームを記録するために利用されることも多い。例えば、球技における投球フォームや陸上における身体動作を記録に残し、客観的に見ることができる。これは上達するために必要なことであり、一人でも記録することが可能であることから、自撮りドローンの魅力は計り知れないものがある。そのニーズに応じて、MavicProには多くのセルフィー撮影のための機能が豊富に用意されている。
1つ目は、アクティブトラックによる自動追尾撮影システムだ。これはタップするだけで自動で被写体を追尾撮影する機能で、次の3つのモードが用意されている。「被写体の前後を追尾」「被写体の周りを旋回」「ひたすら照準を合わせ続ける」だ。セルフィーの目的に合わせて最適な撮影方法を選択することが可能となっている。
2つ目にジェスチャー機能の搭載である。ドローンのカメラに向かって、手の形でサインを送ることで遠隔指示により写真撮影を行う機能だ。これによりコントローラーを持たず両手をフリーにした状態で、好きな撮影のタイミングでのセルフィーが可能となる。
突き詰められた安全対策
MavicProには、一定の高度を守って飛行させる機能があり、例えば山道など傾斜のあるロケーションでの撮影でも、安心して飛行させることができる。また屋内など早い速度を出す必要のない場合には、トライポッドモードと呼ばれる「低速である反面、細かなコントロールが可能」となる操作モードが用意されており、慎重なコントロールが可能となっている。
その他にも時速36キロまでのスピードであれば、障害物の自動回避システムが働き、進行方向15m先までの障害物を自動回避する機能や、重要なセンサーを重複して装備しており、センサー故障時には自動でもう一方のセンサーに切り替わることで、事故を未然に防ぐなど突き詰められた安全対策が施されている。
タッチスクリーンによるコントロールを導入
Mavic Proは手持ちのスマートフォン/タブレットとをWifi接続し、タップして操作する直感的なインターフェイスを備えている。Wifiモードと送信機モードはスイッチひとつで切り替え可能であり、Wifi接続時には操作可能距離は80mと短くなるが、セルフィー撮影やアクティブトラックモードを利用することを想定すると十分な距離といえる。
Phantom4とMavicProのスペック比較レビュー
ここまでMavicProの特徴を見てきたが、ここで同じくDJI社の看板シリーズであるPhantomとのスペック比較をしてみたい。比較対象は、MavicProよりも半年ほど前に発売されたばかりのPhantom4である。Phantom4と比較する理由は、この2機は同価格帯であり、迷う人は多いと感じるためだ。スペック比較にあたっては、ドローン本体(機体)とカメラ(空撮性能)の2つの視点から比較検討を行う。
機体基本スペック
Mavic Pro | Phantom4 | |
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|
発売日 | 2016年11月 | 2016年3月 |
定価 | 119,800円 | 123,000円 |
対角線サイズ | 335mm | 350mm |
本体重量 | 743g | 1380g |
バッテリー重量 | 240g | 462g |
最大上昇速度 | 18km/h | 21.6km/h |
最大下降速度 | 10.8km/h | 14.4km/h |
最高時速 | 65km/h | 72km/h |
運用限界高度 | 5,000m | 6,000m |
最大フライト時間 | 27分 | 28分 |
最大伝送距離 | 4,000m | 3,500m |
まず外観から比較していくと、MavicProは一回りサイズが小さく、重量ではPhantom4の半分程度と非常に軽量化されている。機体重量(▲637g)バッテリー重量(▲222g)で合計▲859gも軽いという計算になる。これに合わせてドローンを携帯するためのリュックなどの携行品もサイズダウンすると考えると、MavicProは約1kg装備重量を軽くすることが可能ということだ。
約1キロという重量。これはチワワ1匹に相当する。山登りにチワワを抱いて登る人間はいるだろうか、いやいない。そういうことである。
上昇下降速度、飛行速度など飛行性能においてはPhantom4に軍配があがる。しかし実際には最高速度という点での比較であり、その数値も些細な差である。ドローンレースに参加する場合を除いて、この速度差は問題にはならないのではないかと思う。
最大フライト時間は意外にもほぼ同じだ。バッテリーはMavicProが3セルに対して、phantom4は4セルと、明らかにパワーが違う。しかしMavicProは総重量がPhantom4と比較して1/2程度1と軽いため、3セルバッテリーでもPhantom並みのフライト時間を実現していると考えられる。
運用限界高度ではPhantom4の勝ちである。ただし1kmの差があるとはいえ、MavicProは5kmまで飛行可能である。富士山でさえ3776m。これ以上は個人使用の範囲においてはオーバースペックであり、無用のように感じる。また注意したいのは、運用限界高度は5kmであるが、操縦可能距離とはまた別であるということ。操縦可能距離はMavicProが4km、Phantom4は3.5kmと実はmavic proのほうが操縦可能距離は長いのだ。
空撮性能(カメラスペック)比較
Mavic Pro | Phantom4 | |
センサーサイズ | 1/2.3" | ←同じ |
有効画素数 | 12.4M | ←同じ |
FOV(視野角) | 78.8° | 94° |
35mm換算 | 28mm | 20mm |
f値 | 2.2 | 2.8 |
ISOレンジ(ビデオ) | 100-3200 | ←同じ |
ISOレンジ(写真) | 100-1600 | ←同じ |
電子シャッタースピード | 8 秒~1/8000 秒 | ←同じ |
最大静止画サイズ | 4000 x 3000 | ←同じ |
センサーは両機種とも1/2.3型で、これはペンタックスなどのコンデジにも採用されているものと同サイズであり、ドローンに搭載されるカメラとしては申し分ない性能があると言えるだろう。
視野角に関してはMavic proのほうが狭い。ただし、この視野角というものは、広ければ良いという単純なものでもない。一般的には90°前後が適していると言われているが、好みによるところでもある。
F値とはレンズの明るさを表した指標である。これは数値が小さい方が、光をより多く取り込むことができることを意味するため、F値が小さいMavicProのほうがより高性能なレンズといえる。ちなみに一眼レフカメラの世界では、このF値の小さなレンズほど、とんでもなく高価となっており、写真を撮る際には重要視されるポイントである。
Mavic Pro 考察レビューまとめ
MavicProはドローンとしての1つの完成形であるPhantomに、個人ユーザー目線でのドローンに対するニーズも元に、携帯性・操作性を格段に高めたドローンと言える。つまり個人ユースにおいて選ぶべきドローンの最適解なのだ。
DJI社はドローン体験会も多く開催されており、ユーザー数が多くトラブル時にも簡単に調べたり、相談することができるため、2017年ドローンを購入しようと考えている人にとってMavicProは選んで損はない大本命の一機と言えるだろう。
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